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(特定生殖補助医療巡る法案提出)「出自知る権利」を明記/ドナーの個人情報保護と両立/党PT座長・秋野公造参院議員に聞く
夫や妻以外の第三者から提供された精子や卵子を用いる特定生殖補助医療で生まれた子の「出自を知る権利」などを定めた法案(議員立法)が今月5日、参院に提出された。超党派議員連盟の幹事長で法案の筆頭発議者を務めた秋野公造参院議員(公明党生殖補助医療に関する法整備等検討プロジェクトチーム=PT=座長)に法案の意義やポイントを聞いた。
--法案の意義とポイントは。
第三者の精子・卵子の提供を受けて生まれた子の「出自を知る権利」を初めて法定化しようとするという点で画期的だ。
提供を受けた夫婦、子、精子・卵子提供者(ドナー)の情報は、国立成育医療研究センターに100年間保管される。出自を知りたい場合は、子が成人後(18歳以降)に、同センターに自分の情報があるか確認でき、ある場合はドナー個人を特定しない「身長、血液型、年齢」といった情報がドナーの同意なく提供される。名前など個人を特定できる情報や好物といったその他の情報は、問い合わせした時点でドナーの同意を得られれば知ることができる。ドナーが亡くなっていた場合は、提供時の同意に基づいて氏名などが伝えられる仕組みだ。親となる夫婦の努力義務として、特定生殖補助医療で生まれた事実を子に告知(テリング)する規定も設けた。
また、特定生殖補助医療を行う医療機関は認定制、ドナーのあっせん業務を行う業者は許可制とし、適切な医療が提供されるよう担保した。「性の搾取」などを防ぐため、金銭など利益の授受は禁止する。考え方としては、献血や臓器移植と同様だ。
■公明が合意形成リード
--公明党が果たした役割は。
2020年に、議員立法で生殖補助医療法を成立させて、人工授精や体外受精などの生殖補助医療の定義や基本理念、親子関係を定めた。その後も、子を授かりたいと願うカップルらの小さな声を集めてきた。時間をかけて、法律婚の夫婦以外にも対象を拡げようと議論してきたほか、子に開示される非特定情報について議論をリードした。
個人を特定できる情報を開示するべきだという声も上がったが、プライバシーなどの観点からドナーが集まらない可能性がある。個人を特定できない情報をもっと開示するべきだとの声もあったが、提供時から変化しない三つの情報とし、さらに個人を特定できない自由記載も想定している。今後は、成育医療研究センターを介して子とドナーがやりとりできる仕組みに期待する。ドナーを確保し、かつ子の権利も担保しようとバランスを取ったのが、この3項目と自由記載だ。
--事実婚や同性カップルへの対応、「代理懐胎」については。
法律婚以外の場合、ドナーが親になる可能性をどう考えるか、検討する必要がある。代理懐胎については、懐胎する女性には流産のリスクなどデメリットしかないとの結論になり、法律で認められた医療行為には含まなかった。
--今後の展望や決意は。
20年に生殖補助医療法を議員立法として成立させた後、不妊治療の保険適用や仕事との両立支援策が実現した。法律ができれば、その分、制度がさらに拡充していくことが期待される。
生命倫理に関する法律は、党派を超えて議論を重ねる必要がある。公明党として、今後も合意形成を図っていきたい。