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新たな財源を生み出す「政府系ファンド」とは?/国の資産を計画的運用/岡本三成政調会長に聞く

本日無料公明新聞2025年10月19日付 1面

 新たな政策の財源を生み出す仕組みとして、公明党が創設を訴える「ソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド)」について、岡本三成政務調査会長に聞きました。

■(そもそも何)ノルウェーなど海外で先行事例

 --「ソブリン・ウェルス・ファンド」とは。

 岡本政調会長 国が持っている資産を運用して、その利益を国民に還元するというファンドです。NISA(少額投資非課税制度)は自分のために資産を運用しますが、その政府版だと考えていただけたら分かりやすいと思います。

 --海外の事例は。

 岡本 すでに多くの国で導入されています。世界最大級の政府系ファンドはノルウェー中央銀行投資管理部門で、約1兆7000億ドル(約255兆円)の資産を持っています。

 シンガポールのファンドは運用収益の最大半分を国の予算に充てることができ、その額は国家予算の約2割に上るとされています。

■(どうやるの)蓄積した経験と人材を活用

 --なぜ、政府系ファンドが必要なのか。

 岡本 理由は大きく三つ挙げられます。

 一つは、デフレからインフレに変わったことです。物の値段が下がっていくデフレ局面では、そのまま現金で持っておくことが賢い選択でしたが、物価上昇のインフレ局面では、同じ金額でも買える物が、どんどん少なくなっていきます。お金を寝かせておくのではなく、お金に働いてもらわなければ目減りする時代に突入しました。

 二つ目は、現在、公的部門が持っている資産が、それぞれの政策目的に沿ってバラバラに運用されている点です。つまり「個別最適」にはなっていますが、「全体最適」の状態にはなっていないのです。そのため、利益を得られるチャンスを逃している「機会損失」が大きいとみています。

 三つ目は、ファンドを運用するための人材やノウハウが国内に蓄積されてきたことです。年金積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、この5年間で100兆円近くの収益を上げており、世界トップクラスの運用成績です。こうした経験や人材を国の財源を生み出すために活用すべきです。

 --ファンドの財源は。

 岡本 例えば、政府は急激な円安や円高が起きた時に介入できるよう、200兆円程度の外為特会(外国為替資金特別会計)を持っています。日本銀行には、金融緩和のために購入を続けてきたETF(上場投資信託)という金融商品が80兆円程度あります。

 その他にも、総資産額約250兆円のGPIFをはじめ、さまざまな基金が公的部門にあり、全て足すと500兆円を超えます。

 これらを一体的かつ戦略的に運用して、現在よりも1%高い運用益を出すだけで、年間約5兆円になります。5兆円の財源があれば、例えば、公明党が導入した食料品などの軽減税率「8%」を“ゼロ”にすることも可能です。=2面に続く