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(分娩空白地の今=下)安全な出産、カギ握る「集約化」/リスクに応じ、役割分担/世界最高水準の救急体制守る
■市町村の6割にはお産の施設がない
少子化の加速に伴い、国内の分娩施設は1996年の約4000から2023年には約1800まで減少した。日本産婦人科医会の鈴木俊治常務理事は、昨年10月時点で全市区町村の6割に当たる1041自治体に分娩施設がないとのNHK報道に触れ「年間200~400件程度の分娩数がないと経営の維持は困難だ。人口の少ない地方ほど厳しくなっている」と語る。
昨年度から始まった医師の残業時間の上限規制も、長時間労働の是正による離職防止が期待される半面、医師の「献身的な自己犠牲」(鈴木常務理事)に支えられてきた24時間365日対応の維持が難しくなったとの指摘がある。産婦人科医の数自体は微増傾向にあるものの都市部に医師が集中する事態や、妊婦の高齢化などに伴うハイリスク出産への対応も含めて、課題は少なくない。
■遠方の病院と連携する仕組みを活用
国は、安全で質の高い周産期医療の提供体制を持続可能なものとするため、基本的な方針として同医療の「集約化・重点化」を打ち出している。
低リスクの分娩は一般の病院などで対応し、比較的高度な医療行為などが必要なら地域周産期母子医療センター(昨年4月1日現在で全国296カ所)で受け入れる。リスクの高い妊娠に対する医療や高度な新生児医療などは総合周産期母子医療センター(同112カ所)が担う。
さらに国は、近隣に分娩施設がない場合に、最寄りの診療所などで妊婦健診を受け、分娩時は遠方の病院を利用するセミオープンシステムや、最寄りの診療所などで健診を担当した医師が分娩時に遠方の病院に出向いて対応するオープンシステムの活用を推進。医師の偏在対策にも取り組む。
分娩空白地帯などの課題に直面する日本の周産期医療。それでも鈴木常務理事は「周産期救急の安全性は世界トップクラスの水準」と太鼓判を押す。その上で「集約化やセミオープンシステムの活用などを通じて、いかに維持していくかが大切だ」と力を込めた。
■安心の周産期医療を必ず/公明党少子化対策・子育て支援本部長 伊藤孝江参院議員
公明党は、妊娠期から出産、育児期までの切れ目ない支援を一貫して推進してきました。児童手当の創設・拡充や出産育児一時金の増額も、その一環です。今年5月には石破茂前首相に対し、出産費用の自己負担の実質無償化や、全国どこに住んでいても安全で質の高い周産期医療を受けられる体制の維持などを提言。経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に反映させました。
「遠方で出産せざるを得ない」との切実な声を直接伺う機会も増えています。国・地方の公明議員が連携し、出産時の搬送体制確保など安心の出産体制を必ず築きます。