差別の歴史、繰り返さない--。ハンセン病患者の強制隔離を定めた「らい予防法」の廃止から30年、元患者らが国に賠償責任を求めた訴訟判決から25年が経過した今年、公明党はハンセン病問題対策本部の谷合正明本部長(参院会長)を中心に、各地の国立療養所を訪問している。現場で感じた課題や今後の展望について谷合本部長に聞いた。 ■資料館・納骨堂の永続化を/真の共生社会めざし後世に継承 〈尊厳と終生安心の生活の確保に全力〉 --療養所訪問の背景は。 入所者の平均年齢が90歳近くになっており、終生安心の生活を確保するために、最後まで尊厳を持って安心して暮らせる体制づくりを国として責任を持ってやり遂げることが、まずは重要だ。 その上で、療養所の永続化にどのように取り組むのかが今、問われている。入所者は年々減少しており、「今、動かなければいけない」との思いだった。公明党は長年、ハンセン病問題の解決に取り組んでおり、その思いが連綿と受け継がれている。ハンセン病を巡る闘いには、人権の党・公明党の原点が刻まれている。 〈差別の体験を聴取/地域交流の実情も〉 --訪問を通じて感じたことは。 全国13の国立療養所は、立地だけでなく歴史や実情も千差万別だ。しかし、形は違っても、その根底にある偏見・差別との闘いは共通している。 当事者から「中学校を卒業できなかったことが一番悔しい」との話を聴き、ハンセン病問題を決して過去のことにしてはならないと胸に刻んだ。本名とは別の「園名」で暮らしている方々や、亡くなっても遺骨を故郷に戻せていない方々もいる。らい予防法廃止後も街中で差別を受けたという体験も伺った。一方、療養所によっては、地域との交流があり、日常生活の中で共生してきた歴史もある。隔離政策と差別の歴史を踏まえた上で、そこで暮らした一人一人の生活や地域との関わりを含め、多様な歴史を知ることが大切だ。 ■当事者の思いに寄り添う生命尊重の中道政治こそ重要 〈人間の「怖さ」実感/検証と教育を推進〉 --療養所の永続化に向けた取り組みは。 人権の歴史を伝えていくため、資料館や納骨堂などを当事者の意向に沿いながら残していく必要がある。永続化に必要な国の予算もしっかり確保していきたい。 ハンセン病について学ぶと、人間の「怖さ」を感じる。当時、隔離が社会や本人のためになると考えられ、善意さえも隔離を後押しした。患者を地域から排除しようとした「無らい県運動」はその象徴だ。なぜそうしたことが起きたのかをしっかり検証し、教育などを通して後世に伝えていかなければならない。 当事者の声を直接聴くことができる、この数年が貴重だ。各療養所を訪ねるとともに、公明党のネットワークを生かし、療養所の有無にかかわらず全国の議員と意見交換していきたい。与野党を問わず、党派を超えた取り組みも進めていく。 〈支援を受けた人も手差し伸べる側に〉 --共生社会の実現については。 政治は、ともすると多数派の論理で進められがちだ。だからこそ、声を上げにくい人や少数派の立場に置かれた人の声に耳を傾け、一人一人の生命・生活・生存そのものを最大に尊重する中道政治が重要だ。同時に、少数者の声をひとくくりにせず、自分の思い込みによる「正義」を押し付けないことも大切だ。 当事者を「かわいそうな人」「支援される側」としてだけ捉えることも、本当の意味での差別解消にはつながらない。支援を受けた人が、今度は誰かに手を差し伸べる側にもなる。支える側、支えられる側と固定するのではなく、互いに支え合い、一人一人の尊厳が守られる真の共生社会を、公明党として後押ししていきたい。 ■党対策本部の取り組み 谷合本部長らは今年に入り、5月10日に星塚敬愛園(鹿児島県鹿屋市)、11日に奄美和光園(同奄美市)、22日に多磨全生園(東京都東村山市)、6月15日に大島青松園(高松市)、7月18日に沖縄愛楽園(沖縄県名護市)、30日に栗生楽泉園(群馬県草津町)、8月31日に東北新生園(宮城県登米市)、松丘保養園(青森市)を訪問した。長島愛生園、邑久光明園(ともに岡山県瀬戸内市)については、谷合本部長の地元であることから平時から連携を取っている。まだ訪れていない療養所についても、今後、順次訪問する予定だ。