最大震度7を記録した熊本地震から1カ月。猛暑と余震が続く被災地では、過酷な状況下で懸念される災害関連死を防ぐ取り組みが続く。いかに災害弱者の命と健康を守るか。苦悩する在宅避難者や、被災した福祉施設などの窮状を探るとともに、10年前の熊本地震で当時4歳だった次女の花梨ちゃんを関連死で亡くした「災害関連死を考える会」の宮﨑さくらさんに話を聴いた。=熊本地震取材班 児玉正伸、千葉正人 ■障がいある家族との避難「気を遣う」/不安抱え自宅で暮らす 宇城市松橋町を訪ねると、倒壊した家屋や、崩れた瓦屋根をブルーシートで補強した家々が目に付く。 自宅が被災した大工の林田行人さん(65)は、家族5人で在宅避難を続けていた。暮らしていた木造住宅は柱が壊れ、瓦屋根や天井も崩落した。「損壊が激しい家屋の一部では住み続けられない。建て直さないといけないかもしれない」 震災後、身体障がいのある長男・博樹さん(39)を連れて避難所で生活を送ることはできないと判断。避難所で他の避難者に気を遣いながら生活することへの不安や「自宅を離れたくはない」との思いもあり、在宅避難を決めた。 大工の腕を生かして壊れた窓を応急修繕。天井などが崩れた部屋はなるべく使わず、自宅内の被害が少なかった場所で生活を送る。 ■余震への恐怖「熱中症も心配」 発災から約10日間は「余震への恐怖で被災した家屋で眠ることができなかった」と林田さん。自宅に隣接する仕事の作業場内に止めたトラックの荷台で寝泊まりを続けたという。父・孝行さん(91)も車中泊を経験したことから、「熱中症にならないか心配でたまらなかった」と振り返った。 林田さんは、被災住宅の屋根をブルーシートで補強する仕事も請け負う。住民と関わる中で「被災箇所の修繕にかかる補助などについて行政側からの情報発信が十分ではないと感じる」。 生活の行方や住宅再建、体調変化に気を張る日々に不安の色がにじんでいた。 ■介護の支え手負担重く 多くの高齢者や障がい者が生活する福祉施設では、自らも被災しながら日夜奮闘する介護職員の姿があった。氷川町鹿島にある社会福祉法人白寿会(境徹夫理事長)の特別養護老人ホーム「やすらぎ荘」の敷地内には、至る所で地割れが生じていた。隣接する障がい者支援施設やグループホームも軒並み被災。施設によると、これまでに熱中症の疑いで24人が病院へ搬送され、地震を機に持病が悪化した利用者もいるという。 ■井戸破損で給水往復 やすらぎ荘では、40人分の個室が整備された建物内で断水が続く。井戸水をくみ上げるためのポンプが破損して修理が必要だが、復旧のめどは立っていない。 現在は、熊本市から毎日給水車で運ばれてくる水を利用しており、介護職員は敷地内の給水器に何度も水をくみに行く日々だ。バケツ1杯分でトイレ1回分に相当するという。日常業務に加えのしかかる負担増。職員の山口知子さんは「利用者と職員のどちらにとっても過酷な状況が続いている」とため息を漏らす。 境理事長は地震からの約1カ月間をこう振り返る。「職員同士が団結して従事してくれているおかげで、なんとか持ちこたえているが厳しい状況に変わりはない。利用者がいつ変調を来すか気がかりでならず、職員の心身の疲弊も心配だ」 ■関連死防ぐ支援さらに 被災者が在宅避難や車中泊を選ぶ理由は、防犯面の不安やプライバシーの確保、住み慣れた場所を離れづらいなど多岐にわたり、一様ではない。 関連死を防ぐため、被災地では医療関係者や災害派遣医療チーム(DMAT)、行政、支援団体が避難所の環境改善や、個別訪問などによる健康管理の啓発に取り組む。一方、点在する避難形態や、在宅避難者の元を巡回する保健師らの人員不足などで実態を把握しきれず、支援が十分行き渡っているとは言えない。 278人が犠牲となった10年前の地震では、災害関連死が全体の約8割を占めた。県によると、今回の地震では死者38人のうち2人が関連死の疑いがあるとされている。 引き続き、在宅避難者らへの見守りや、必要な情報、健康支援を届ける必要がある。地域に根ざす福祉施設の事業継続を支える支援も不可欠だ。元の生活を取り戻せるまで、誰一人として取り残さない支援体制の構築が求められている。 ■教訓生かし、命守る行動を/災害関連死を考える会 宮﨑さくらさん 在宅避難では家財整理や災害ごみの片付け中の熱中症に注意が必要で、車中泊では足を伸ばし、定期的な運動を心掛けることが大切です。関連死の原因は避難環境によって異なります。過去の教訓からそれぞれのリスクと対策を知り、命を守る行動を取ることが最重要です。 私たちの「考える会」では、実際に亡くなられた方の事例と予防策をまとめた対策事例集や、避難生活のセルフケアを目的としたアプリを作成するなど、災害関連死を防ぐための情報を発信しています。 もう二度と、災害を乗り越えられた命が失われる悲しみを誰にも味わってほしくありません。生き延びた命をなんとしても守り抜きたい。これからも被災者に寄り添いながら命を守るための行動を伝え続けます。