災害からの生活再建に向けた各種支援を受けるために欠かせない罹災証明書。熊本地震の被災地では、その申請・発行に向けた取り組みが進んでいる。罹災証明の業務を迅速化するため、政府は経験豊富な自治体職員を「罹災証明コーディネーター」として登録する制度に基づき、熊本にもコーディネーターを派遣している。現地での奮闘を追った。(熊本地震取材班) 「角度が2度傾くだけでも、家の中はかなりの被害が想定される。傾きを測るには…」。8月下旬、熊本県八代市役所内の一室では、県外自治体から応援で駆け付けた職員にアドバイスする女性の姿があった。内閣府によって派遣された罹災証明コーディネーターの松山美穂さんだ。罹災証明書を発行するため、住宅を「全壊」「半壊」などと判定する被害認定調査の方針やポイントを伝えていた。 罹災証明書は、地震や水害により住宅が受けた被害の程度を公的に証明する書類だ。政府は公明党の主張を受け、証明書の発行事務に精通した自治体職員を登録し、被災地のニーズに応じて派遣する制度を2025年7月に創設。今回の地震でも、これまでに宇土、宇城、八代3市と、嘉島、美里、氷川3町に計18人が派遣された。現在も八代市、氷川町に派遣中だ。 ■被害認定調査の方針策定など担う 松山さんは普段、大分県佐伯市役所の防災危機管理課に勤務。発災当初から八代市に入って応援職員を受け入れ、罹災証明書の申請受け付けの体制整備や被害認定調査の方針策定、調査に当たってのアドバイスなど、多岐にわたる業務を担ってきた。 八代市では、応援職員を中心に2、3人で1組のチームをつくり、被災住宅を訪問して調査に当たる。調査員らはコーディネーターから伝えられた方針のもと、住宅の傾きや損傷具合を丁寧に調べていた。市資産税課の金橋俊雄課長は「コーディネーターのおかげで応援職員がまとまり、効率的な調査につなげられている。われわれも業務量が多く手いっぱいなので、もしいなかったらと思うと、ぞっとする」と語る。 松山さんは「一日で調査できるペースは徐々に速くなってきた」としつつ「やはり課題はマンパワー不足。応援職員も一定の期間で入れ替わるので、もう少し長い期間いてもらえると助かる」と指摘する。 同県災害対策本部によれば、40市町村で計6万9624件(1次、2次調査)の申請があり、交付は3万2146件と交付率は約46%(8月30日現在)。熊本市は78・7%、八代市は30%、宇城市は13%などと地域によって進捗にばらつきがある。被災者の生活再建へ、さらなる迅速化が求められている。 ■県行政書士会が申請を無料支援 罹災証明書の申請に当たっては、同県行政書士会が無料でサポートする支援が8月25日から始まっている。 まずは電話で相談を受け付け、担当する行政書士が順次、相談者のもとへ訪問。自治体窓口やオンラインでの申請を支援する。けがで入院している人や、一人暮らしの高齢者など、自力で申請することが難しい人に対応することが目的だ。受付電話は、096・237・7373。受付時間は午前9時30分~午後4時30分で、土日・祝日も受け付けている。 同県行政書士会に対し、申請をサポートする体制整備を初動から要望してきた公明党熊本県本部の城下広作代表(県議)は「罹災証明書の交付は生活再建に向けて不可欠だ。支援の輪から誰一人取り残されないよう万全を尽くす」と力を込める。