正社員とパートタイム・有期雇用労働者との不合理な待遇差の解消をめざす「同一労働同一賃金」。10月から関連ルールが改正され、労働者が待遇差の説明を求めやすくなるほか、各種手当などの考え方がより明確になる。改正の背景とポイントを解説する。 ■(そもそも何?)正社員とパート・有期雇用労働者の不合理な待遇差解消をめざす取り組みのこと ■パート・有期法が2020年に施行 同一労働同一賃金とは、同じ企業で働く正社員とパート・有期雇用労働者との間にある不合理な待遇差の解消をめざす取り組みだ。2020年4月に施行(中小企業への適用は21年4月)されたパートタイム・有期雇用労働法では、基本給や賞与などのあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されている。また、待遇に関する納得性を高める観点から、こうした労働者は正社員との待遇差の内容や理由などについて、企業に説明を求めることができ、求めがあった場合、企業は説明しなければならないとされている。 公明党は、同一労働同一賃金の実現を通して従来の「正規/非正規」という概念をなくし、雇用形態によって賃金などの労働条件に格差のない柔軟な働き方を可能にすることをめざしている。 ■(背景)賃金差縮小も課題多く パートタイム・有期雇用労働法の施行後、正社員との待遇差の是正が進んできた。厚生労働省の調査では、フルタイムで働く正社員・正職員と正社員・正職員以外との賃金格差は縮小傾向にある【グラフ参照】。 厚労省によると24年時点で、雇用形態に関わらない公正な待遇確保の実現に向けて「取り組んでいる、または取り組んだ」事業所の割合は6割超。これに「待遇の見直しは必要ないと判断した」「異なる雇用形態が存在しない」を合わせると9割を超える。 一方で、課題も多く残る。縮小傾向とはいえ、賃金格差はなお存在しているほか、待遇に関する説明義務に関しても、さらなる改善が求められている。 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働者調査(23年)によると、同一労働同一賃金について内容を知っている労働者は約3分の1にとどまり、正社員との待遇差の内容や理由について、企業に説明を求めたことがある人は8%にすぎなかった。 説明を求めたことがない理由では「特に理由がない、考えたことがない」が最も多い一方、「説明を求めることができることを知らない」ほか、不利益な取り扱いへの懸念や説明を求めにくい雰囲気を挙げる回答も一定程度見られた。 企業から待遇差の説明を受けた人の方が、勤務先や仕事への満足度が高いとの結果も出ている。企業による待遇差の説明は、労働者の納得感や満足度を高める上でも重要だ。 ■(ここが変わる)家族手当、住宅手当など/待遇の考え方を明確化 こうした状況を踏まえ、10月からルールが改正される。ポイントは大きく三つある。 一つ目は、パート・有期雇用労働者を雇い入れた時の労働条件明示事項の追加だ。企業には現在、雇い入れ時に昇給や退職手当、賞与の有無、相談窓口を書面などで明示する義務がある。10月からは新たに「待遇の相違の内容・理由などに関する説明を求めることができる」旨の明示が必要となる。待遇差について疑問が生じた際に相談を促すことが目的だ。 二つ目は、どのような待遇差が不合理に当たるかを示した「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正だ。賞与や各種手当、福利厚生について記載が充実・追加され、考え方がより明確になる。 例えば退職手当については、これまでガイドラインに記載がなかった。今回、退職手当などの目的には「労務の対価の後払い」や「功労報償」などがあることを明記。こうした目的がパート・有期雇用労働者にも当てはまる場合、職務内容などの違いに応じた均衡の取れた支給をしなければ、不合理と認められる可能性があるとした。 また、家族手当は、労働契約の更新を繰り返すなど相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者に正社員と同一の支給を求める。 住宅手当も、転居を伴う配置変更の有無に応じて支給される場合、同様の配置変更がある労働者には正社員と同一の手当を支給しなければならない。このほか、夏季冬季休暇も同一の付与を求める。 三つ目は、企業の雇用管理に関する指針の改正だ。待遇差の説明方法について、これまで基本としてきた、資料を活用した口頭説明か、説明すべき事項を全て記載した分かりやすい資料を交付するなどの方法のいずれかによるとした。 正社員への転換制度の内容や転換実績などについて、パート・有期雇用労働者への明示や、ウェブサイトなどでの定期的な公表を促す内容なども追加された。