きっかけは、地元で公明党議員が配る1枚の通信だった。携帯の番号が記載されていた。それを読んだ一人のお母さんは、電話を掛けた。この人なら……。小児急性リンパ性白血病と闘う埼玉県川越市在住の子どもの母親Aさんと、小ノ沢哲也市議の共闘が、ここから始まった。同市で昨年秋から、白血病などの治療によって定期予防接種の効果が失われた20歳未満の人に対し、ワクチン再接種への公費助成が適用されるようになった。 ■治療で失った免疫を、もう一度/きっかけは議員通信、母の願い市政動かす 8月中旬、小ノ沢市議と一緒に川越市のAさんを訪ねると、東北の帰省先から戻ったばかりというのに、笑顔で迎えてくれた。 「この夏は実家に泊まれたんです。息子は4年前に発病して以来、泊まりがけの外出は初めて。予防接種を打ち直したら先生(医師)が『行っても大丈夫』と言ってくれて」 小学3年生のAさんの長男は、5歳の時に急性リンパ性白血病と診断された。 輸血と化学療法を受けながら1年間の入院生活。退院してからの2年間も抗がん剤を飲み続けてきた。再発を防ぐために運動も外出も極力控え、加熱調理したもの以外は食べられない日々。昨年、つらかった服薬治療がついに終わり、担当医は「よくここまで頑張りましたね」とねぎらった。 この間、治療の“代償”に直面した。さまざまな化学療法を受けたことで、幼少期の定期予防接種で獲得した免疫が「半分ほど失われている可能性がある」と医師から告げられたのだ。「もう一度、ワクチンを打ち直す必要がある」 ■制度上にある“壁”、対象範囲の拡大を 再接種の必要性に迫られたAさんは2024年夏、情報収集する中で、白血病患者らの予防接種の再接種を公費助成する制度があることを知る。近年、助成を開始する自治体が全国に広がっており、川越市もその一つだった。しかし対象は「造血細胞移植を受けた人」に限定されていた。 Aさんの長男のように、移植ではなく化学療法で免疫を失うケースは決して珍しくないものの、助成を受けることができない。しかし、さらに調べると対象範囲を拡大している自治体があると知った。そんな矢先に目にしたのが、小ノ沢市議の通信だった。 通信には、小ノ沢市議のワクチン関連の実績が書かれていた。面識はなかったが“この人なら力になってくれるかも”と思い切って電話を掛けた。じっくり話を聞いた小ノ沢市議は、直ちに行動を起こす。 ■議会で公明市議が闘病体験を代弁 Aさんからの情報提供を基に小ノ沢市議は、横浜市や水戸市、東京都八王子市など、助成対象を拡大している自治体の窓口に「片っ端から電話を掛けた」。調べた結果を踏まえて同年12月の定例会で質問に立つ。Aさんの了承を得て闘病体験を議場で代弁した。先進自治体の事例を示し、最後に力を込めて、こう訴えた。 「小さい子どもが、いろんなきつい検査を受けて、大変な思いをして、さまざまな制約の中で生活をしているわけです。せめて予防ワクチンの再接種が必要になった場合、造血細胞移植を行っていなくても、市の予算を活用して対象を拡大していただきたい」 議会中継をAさんが見守ってくれていたことが小ノ沢市議の言葉に力を与えた。その思いは市長の決断を促し、昨年10月から川越市の助成制度の対象が拡大された。Aさんの長男も、風疹や水ぼうそうなどのワクチン再接種に助成を受けられるようになった。 「こんなに親身に動いてくれるなんて本当に感謝です」と話すAさん。「川越市で始まったように他の街でも広がって、誰かの支えになれば」と望む。Aさんの長男は、少しずつ皆と同じように遊んだり運動したりできるように。この夏の一番うれしい出来事を聞くと、笑顔で答えてくれた。「学校のプールに友達と入れた」